「飛んで火にいる夏の虫」という言葉があるように、たいていの昆虫は光に引き寄せられる習性を持っています。
みなさんも、夜の街灯や部屋などの明かりに虫が寄ってくるのを見たことがあるでしょう。
この光を追う行動特性を「走光性」と言います。これは、「走性」という方向性がある外部からの刺激に対しての生物が示す生来からの行動のひとつです。
ここでは、昆虫の走光性について詳しく探り、その生存戦略について理解を深めていきましょう。
昆虫の「走光性」について
走光性とは?
この走性にはさまざまな種類があり、圧力・電流・水分・温度・磁場・重力などの外部からの刺激に対応しています。その中の1つに光があるわけです。
走光性というのは、昆虫を含む生き物が光の刺激に反応し、移動する現象です。
ただ、あまり知られていない事実として、この走光性には2つの種類が存在しています。
1つは昆虫のような生物が光に向かっていく「正の方向性」、もうひとつが光から離れていくという「負の走光性」です。
走光性がある昆虫と生存戦略
正の走光性を持つ昆虫として有名なのがハエや蛾ですが、負の走光性を持っている昆虫もいます。
例えばミミズです。ミミズは、光を避ける傾向があります。
では、昆虫の光に近づく走光性には、生物学的理由があるのでしょうか。実は、走光性は昆虫が生き延びるための重要な戦略となっています。
昆虫は、さまざまな環境に適応した走光性を持つことで生存の確率を高めています。
例えば、蛾における正の走光性は、夜空から来る月明かりなどの平行の光に反応し、それに従って飛行することで蛾が水平に飛行するための助けとなります。
一方、ミミズが光を避けるのは、乾燥や敵を避けるためと考えられています。光が強い場所、つまり乾燥しやすい場所や敵に見つかりやすい場所を避けることで、生存率を高めているのです。
ちなみに、昆虫が光に寄ってくるのは厳密に言えば光そのものではなく、人間には見えない紫外線に反応していることが分かっています。
紫外線は、太陽や月の光、人工的な蛍光灯にも含まれており、昆虫は紫外線を色として認識しています。
以上のように、昆虫の走光性は単なる行動特性以上のものであり、生存戦略の一部となっています。
自然界の厳しい生存競争の中で、昆虫は光という情報を利用し、独自の生き方を展開しています。
昆虫の行動の背後には、その生物が生き抜くための知恵と工夫が詰まっており、私たち人間にはそれを理解し学ぶことが必要なのかもしれません。